3rd Ski For Light Japan
プログラム
PROGRAM
1998年1月3日〜6日 福島県 裏磐梯
January 3-6, 1998 Ura-bandai, Fukushima
"If I can do this, I can do anything"
視覚障害者のクロスカントリースキー・プログラムというアイディアは、ノルウェー人のオラブ・ペダーセン(Orav Pedersen)と、アーリング・ストーダル(Erling Stordahl)によって提案され、ノルウェー王室のサポートのもとで1964年より始まりました。この大会は「リデレント(Ridderennet)」といい、現在まで毎年開かれています。
ペダーセンはその後米国に移住し、米国版リデレントである「Race For Light」を1975年にコロラド州で開催しました。このときのプログラムは、その名前がしめすように競技志向で、第1回のプログラムにはアメリカ人、ノルウェー人を中心に約60名が参加しました。
その後「Race For Light」は「Ski For Light」と名称を変え、クロスカントリースキーを競技としてではなくレクリエーションとして、健常者〜障害者の相互理解の促進の手段として考えるプログラムに変わりました。
Ski For Lightは1998年には第23回を迎え、米国、ノルウェーの他に数ヶ国から約280人が参加するプログラムに成長しました。次回のSki For Light(第24回)は、1999年2月21日から28日まで、アラスカ州アンカレッジで行なわれます。
スキー・フォー・ライト ジャパンは、米国Ski For Lightの日本支部として、1995年8月より活動を開始いたしました。初年度である1996年には、1月に第1回の国内プログラムを福島県裏磐梯にて開催し、34名の視覚障害者・晴眼者に参加していただきました。また米国サウスダコタ州で行われた第21回Ski For Lightには、日本から10名の参加者を送ることができました。
2年目、3年目の国内プログラムには、それぞれ50名を超える参加者にお集まりいただき、繰り返し参加される方も増えてまいりました。また米国で行われた第22回、第23回のSki For Lightには、合わせて5名の参加者を送ることができました。
毎年1回の国内プログラムと、アメリカへの参加者の派遣を通じて、今後もスキー・フォー・ライト ジャパンは、参加していただいた方々のご意見や多方面からのアドバイスを参考に、『視覚障害者レクリエーションの充実』、『視覚障害者・健常者間の相互理解』及び『国際交流』を目的として、活動を継続して参ります。
今年も裏磐梯に50人を越える視覚障害者と晴眼者の方々にお集まりいただき、第3回目のスキー・フォー・ライト ジャパンを開催することになった。初参加の方から3度目の方まで、小学生の方から60歳以上の方まで、北海道の方から山口県の方まで、いろいろな方々と初めてお会いしたり、再会できることはたいへんうれしいことである。この機会を利用して、ぜひ多くの友人を作っていただければ幸いである。
さて、私がこのプログラムを始めるきっかけになったのは、1992年の秋ごろ読んだアメリカから毎月送られてくる点字の雑誌である。その雑誌の中には、米国内でおこなわれる各種のイベントについて紹介する部分がある。そのうちの一つにスキー・フォー・ライト インターナショナルというものがあった。大学の卒論を提出した後、何かおもしろいことにチャレンジしてみたいと考えていた私はその記事に飛びついた。1週間500ドルで、食事と宿があり、毎日晴眼者のガイドがついて、1対1でクロスカントリー・スキーができるというのである。クロスカントリー・スキーというものが何なのかはよくわかっていなかったが、とりあえず問い合わせてみることにした。
担当の方は日本からの参加を快く認めてくださった。その2年前夏休みに2ヶ月間アメリカのペンシルバニア州の山奥にあるキャンプ場でキャンプリーダーとしてアルバイトをしたことがある。その時も日本からの参加を簡単に認めてもらえたが、改めてアメリカのすごさを痛感した。
締め切り15分前に、友達や後輩の助けもあり、なんとか卒論を提出し、晴れやかな気持ちでアメリカに向かった。集合場所のミネアポリスの空港には参加者がぞくぞくと集まっていた。ノルウェーからの50人ほどの参加者を含め約250人が参加していたようである。
プログラムは日曜日の夜の全員の自己紹介から始まった。そして、月曜日から木曜日までは、朝から夕方まで、アメリカ人の大学生のガイドの方と、思う存分クロスカントリー・スキーを楽しむことができた。私のガイドであったサラは、クロスカントリー・スキーの技術レベルも非常に高く、たいへん丁寧にスキーを教えてくれた。また、夕食後には、カラオケやダンス大会、歌や演奏などの発表会、ノルウェーの文化を紹介する時間、ゲーム大会など自分のパートナー以外の人々との交流を深めるチャンスも多く用意されていた。しかしもっともコミュニケーションが進んだのは、いろいろなプログラムが終わった後、ホテルの暖炉の前に集まって寝そべり、ワインやビールを飲みながら、何人かでうだうだと話をしたことである。
金曜日は、250人みんなで弁当を持って、スキーをはいてピクニックに出かけた。それまではクラシカル・スタイルといい、両足につけたそれぞれのスキーを、あらかじめ雪面に掘られた二つの溝の中をすべらせていく走法だけですべっていたが、ピクニックとなると溝があるところを行くわけではないので、けっこう苦労した。
最終日は、2種類のレースがあり、どちらかに参加することができた。一つは、英語ではRally(ラリー)と呼んでいたが、5kmをどのくらいの時間で走ってくるかを事前に申告しておき、時計を持たずに走って、一番申告タイムに近かった組が優勝するというレースである。もう一つは、タイムを競う10kmのレースである。私は初めてだったので、Rallyに参加した。
このプログラムに参加して、私は晴眼者と視覚障害者との間にあまりにも壁がなく、お互いが尊重し合いながら、うまくプログラム全体が流れていることに驚いた。参加者はもちろんのこと、企画・運営のすべてに晴眼者と視覚障害者双方が関わり、それぞれがリーダーシップを発揮したり、手伝いをしたりということが自然におこなわれていた。そしてたいへん居心地がよかった。
あまりに居心地がよかったので、翌年も参加しようと思っていたが、仕事の関係で行くことができなかった。しかし、また行ってみたいという気持ちは変わらず、1995年にもう1度参加することにした。この時は、現在スキー・フォー・ライト ジャパンのバイス・プレジデントである丸田さんもいっしょに参加することになった。その時は、ちょうど20回目の記念大会ということもあり、300人の参加があった。
私も丸田さんも思う存分スキーや参加者との交流を楽しみ、帰りの飛行機の中で、ぜひ日本でも同種のプログラムを作りたいと話し合った。しかしなにをどうしてよいのかわからず、いろいろな方に相談しながら、徐々に準備を始めた。
開催場所の選定、宣伝方法の検討、晴眼者ガイドのためのマニュアル作り、スポンサー探し、などなどやらなければならないことはたくさんあった。それらを一つずつクリアしながら、1996年の1月に第1回の日本版スキー・フォー・ライトを実施することができた。参加者は全部で34人であった。また、米国のプログラムにも参加者を派遣しようということになり、9人の方に参加していただくことができた。
その成果を元に参加者や各方面からのアドバイスを受けながら、毎年少しずつプログラムをよくしていこうと考えている。3日間という短いプログラムではあるが、米国で体験したエッセンスをすべて盛り込むことに努力している。ただ、なにぶんスタッフ全員が仕事や勉強の空いた時間に準備をしているため、行き届かないところも多々あるとは思うが、ご了承いただきたい。
昨年参加されたあるガイドの方は、こんなような感想を寄せてくれている。「3度おいしいスキー」というのである。普通に自分ですべる、ガイドの練習のために目隠しをしてすべる、そして視覚障害者をガイドして、コースの様子や情景を説明しながらすべる、というように3度楽しめるということのようである。そのようにとらえていただけることはたいへんありがたいことである。
今年は、パラリンピックが日本で開催されることもあり、障害者の競技スポーツがますますクローズアップされてきている。確かにそのことは重要であり、進歩していくことが必要である。しかし、競技にいたらないまでもレクリエーションという領域で、障害者がもっと自由にいろいろなことにチャレンジしていけるような環境が必要ではないかと考えている。そのためにも、障害者と健常者が対等な立場で、それぞれが自己の可能性を追求するとともに、お互いに相手を理解し合うことのできるプログラムが増えていけばと願っている。
転びながらも、話をしたり、木を触ってみたり、ミカンを雪に埋めたのを探してみたりしながら、クロスカントリー・スキーの魅力を満喫してください。
Warmest Greetings to All Attending SFL Japan
I am Judy Dixon, Treasurer of SFL, Inc. and Chair of the 1998 SFL event to be held in N. Conway, New Hampshire. We are so pleased that SFL-Japan will once again be bringing together blind skiers and sighted guides to learn from each other and enjoy the outdoors. It is with pleasure that we watch your organization grow and, as always, we, in the United States, stand ready to provide any assistance to SFL-Japan that we can.
I believe that one of the most important strengths of any SFL program is the meaningful involvement of disabled people in the organization's administration and I am pleased that this is also being carried forth in SFL-Japan. Your SFL event will provide many opportunities to each participant and I encourage everyone to open your minds, open your hearts, and avail yourself of every opportunity that presents itself.
We wish all of you could join us in New Hampshire and we look forward to welcoming new Japanese skiers who have not been with us before. I hope to one day attend SFL-J myself but until then I wish everyone a most enjoyable event--be safe and have fun!
私は、米国スキー・フォー・ライトのスタッフで、主に会計を担当しておりますジュディー・ディクソンと申します。1998年にニュー・ハンプシャー州ノース・コンウェイで開催される第23回スキー・フォー・ライト インターナショナルの実行委員長をしております。視覚障害者スキーヤーと晴眼者ガイドがお互いに学び合い、屋外での活動を楽しむことを目的とするスキー・フォー・ライト ジャパンが、この冬も開催されることを非常に嬉しく思います。スキー・フォー・ライト ジャパンの成長を見守ることは私たちアメリカのメンバーにとっても楽しみであり、できる限りの協力をしたいと思っております。
スキー・フォー・ライトの活動においてもっとも大きな原動力となるのは、会の運営に対する障害者自身の積極的な関わりにあると考えております。この考えがスキー・フォー・ライト ジャパンにおいても実践されていることは喜ばしい限りです。スキー・フォー・ライト ジャパンの活動は、参加者一人一人に多くのチャンスを与えるものです。参加者の皆様、是非、心を開いてそのすべてのチャンスを思う存分利用して下さい。
是非多くの皆様がニュー・ハンプシャーで開催される米国スキー・フォー・ライトの大会にも参加して下さり、スキー・フォー・ライト インターナショナルに参加されたことのない日本の皆様に出会えることを楽しみにしております。私自身もいつかスキー・フォー・ライト ジャパンの大会に参加できたらと考えております。皆様にとって、安全で楽しく心に残るようなプログラムとなることを祈っております。
長野パラリンピックまでもう僅かとなりました。アクセシビリティについてはとても満足の行く状態ではなく、大会までに整備するのは難しいでしょう。この状態で私が長野に望むことはただ一つ。少なくとも日本の身障者のウインタースポーツのメッカになって欲しいという事です。まだまだ日本ではチェアスキーや視覚障害者のスキーヤーを快く受け入れてくれるスキー場は少ないので、せめて長野ぐらいはそうなって、どんどん初心者が挑戦できる環境を作って欲しいのです。長野パラの選手達がそのためのレールをひいてくれる事を望みたいと思います。
私はクロスカントリー・スキーについては、あまり詳しくありませんが、脊髄を損傷して車椅子の生活となる前もアルペン・スキーは楽しんでいました。しかし、チェアスキーには新たな発見がありました。10年近くのブランクを経ての挑戦であったため、最初は恐さが先行しましたが、その日の午後にはもう楽しめるようになり、カンも取り戻したようでした。特に嬉しかったのは風を感じ、スピード感を味わえる事。いくらレース用の車椅子で走っても、スキーのように感じられるものはありません。様々な身障スポーツに挑戦してきた私でも、これ以上の感覚はパラグライダーで空を飛んだ時ぐらいです。その時も全盲の友達と一緒に挑戦したのですが、今のところ、パラグライダーが簡単に挑戦できるスポーツでない事を考えると、スキーが最もスピード感を味わえるスポーツと言えるのではないでしょうか。
この感覚を一人でも多くの方に味わってもらい、視覚障害者のスキーヤーがどんどん増える事を願っています。数が多くなることが周囲にアピールする最短の方法なのです。最初はスピードを感じる程のスロープではないかもしれません。でも雪山にはそこに居るだけでも様々な発見があります。特に視覚に障害がある方の場合、いつも都会の雑踏の中で酷使している聴覚にリラックス・タイムをプレゼントするのも悪くないと思います。視覚以外の感覚でも感じられる、そして楽しめる事がたくさんあるのが雪山、そしてスキーだと考えます。
先日もアメリカで会ったPT(理学療法士)の方がスキー・フォー・ライトのメンバーだと知りました。海外に行き、海外を滑れるチャンスも沢山あると思います。そしてスキーが自分に向いているスポーツだと発見した人がいれば、是非競技スポーツとしてのスキーにも挑戦して欲しいと思います。国内の大会、海外の大会、そしてパラリンピック。スキーにも限界はないのです。
わたしが、アメリカでのスキー・フォー・ライト大会に参加するようになって、今年で4年目になります。私はアメリカで治療レクリエーション・スペシャリストとして働いており、また障害者のスキー指導も行なっています。
ひょんなことからスキーを始めて今年で16年目になります。雪国で育ったわけでもないのに、どうしてこんなに続けているのか、自分でも不思議に思います。吹雪の中で凍えたり、転んでけがをしたり、天候が悪くて宿に缶づめになったり、途中の道で渋滞に巻き込まれたり、そんな思いをしても、どうしても冬になるとスキーに行きたい気持ちの方が強いものでした。
クロスカントリースキーの魅力って何だろうと思います。健康に良いことも一つです。年を取っても無理なく続けられることも大切です。また、スキーをしたあとのご飯が美味しいことも、忘れてはならないと思います。先日読んだ本に「クロスカントリースキーは新陳代謝を高めるので、スキーをしたあと8時間は、何を食べても太らない」と書いてありました。
そのうえ、スキー・フォー・ライトでは、昼夜を供にすることによって、いろいろな人と知り合いになることが出来ることが大きな魅力になっていると思います。わたしもスキーを通じて知り合いになった人が沢山います。その方々が私の人生をとても豊かにしてくれています。ですから、この機会に出来るだけ沢山の人と話をしてみることを薦めます。
スキー・フォー・ライトにようこそ。この3日間が、楽しいものでありますように。そしてアメリカの Ski for Light にも、ぜひお越しください。いつかお会いできる日を楽しみにしています。
1月3日(土) 12:00 昼食、説明会 13:00 スキーあわせ 13:30〜15:30 クロスカントリースキー練習会 15:30〜17:00 休憩 17:00〜17:30 クロスカントリースキー練習会に参加しないガイドの受付 (休暇村ロビー) 18:00 夕食 19:30〜21:00 ガイダンス(全員) * 自己紹介 * スキー・フォー・ライトについて * 視覚障害について * ガイドテクニックについて 1月4日(日) 7:30 朝食 8:30 スキーあわせ (3日にスキーあわせをしていないガイド) 9:00〜11:00 ガイド講習 (希望者) 11:45〜 視覚障害者の受付 (休暇村ロビー)、昼食 13:00 開会式・自己紹介 (多目的ホール) 13:30〜15:30 スキーあわせ (視覚障害者)、クロスカントリースキー 17:00〜18:00 ミーティング (ガイド: 多目的ホール、視覚障害者: 111号室) 18:15〜 夕食 19:30〜21:00 交流会 (多目的ホール) 1月5日(月) 7:30 朝食 9:00〜11:30 クロスカントリースキー 12:00 昼食 13:00〜15:30 クロスカントリースキー、最終日のレースのためのタイムトライアル 17:00〜18:00 ミーティング (ガイド: 多目的ホール、視覚障害者: 111号室) 18:15〜 夕食 19:30〜21:00 交流会 (多目的ホール) 1月6日(火) 7:30 朝食、チェックアウト (荷物は多目的ホールに移動) 9:00〜 クロスカントリースキー 10:00〜11:00 申告タイムレース (前夜からの豪雪により中止) 12:00〜 昼食、表彰式、アンケート回収、ゼッケン回収 14:00 解散
第3回スキー・フォー・ライト ジャパンを開催するにあたり、多くの方々からサポートを頂きました。ここにお礼申し上げます(順不同)。