第1回 スキー・フォー・ライト ジャパン

参加者の感想


last modified: 2004.3.1
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SFL-Jに参加して

柴田 健一

1月6日から3日間にわたって行われた「第1回 スキー・フォー・ライト ジャパン」に視覚障害者として参加させていただいた。

知った人もおらず、どれだけの人数で行われるのかもわからないまま、雪の猪苗代駅に降り立った。明るいスタッフの人の声に安心しながら裏磐梯国民休暇村に到着。思いのほか、視覚障害者が多いことに驚いたが、昼の団欒で気持ちがすっかり楽になった。

いよいよクロスカントリースキーの始まりである。アルペンスキーというものに1年前に初めて巡り会った私にとっては、このクロスカントリースキーも、スノー・スポーツに対する興味からのチャレンジであった。まったく知識のないままのチャレンジである。思いのほか靴も板も簡単なもので、とても驚いた。

こんなにきれいにコースが切ってあるということも知らず、感心しながらのスタートになった。アルペンスキーをしていたことが少しは効を奏したか、すぐに慣れることができた(勝手にそう思っている)。片方のレーンが崩れている所では、残っているレーンに頼りながら滑らなければならないので、その点が最初やや難しかったが、比較的早いうちにマスターすることができた。最後1カ所の山の登り降りはコースの最大の難所であった。初日は下りを1回も成功することができず、残念であった。

2日目は最終日に行われる申告タイムレースに向けてちょっと張り切った。特に午前中は飛ばしてしまったために、昼過ぎにややダウン。でも、午後もしっかりと頑張って滑った。最後の難所も順調にクリアできるようになり、とにかく楽しい1日になった。

3日目の申告タイムレースは、体のコンディションも雪の状態もよくて、抑えたはずのスピードもさらに早くて、入賞はできなかったが、有意義だった。3日間で合計43キロを滑って「滑り過ぎたで賞」をいただいた。ちょっとがむしゃらに滑りすぎた感もあるが、とても満足のいく3日間であった。次回は、もう少しのんびりと、雪の上で自然を満喫する余裕も持たなければいけないなあと感じた。

初めて滑ってみて、視覚障害者が取り組むスキーとしては、とてもとっつきやすいものであることを実感することができた。このようにコースも切ってあれば、危険も少ないうえ、サポートをする人達も比較的気楽に協力してくれるのではないかと思った。一般的にもクロスカントリースキーはまだまだ知られていないはずなので、このような視覚障害者との会を通じて、今後ますます普及して行ってほしいと願う。

初めて集った人達ばかりであったのにも関わらず、本当にすぐに打ち解けさせていただいたことに感謝している。またなにより、スタッフの人達が本当に親身になって取り組んでくださったことが今回の成功を導いてくれたものと思っている。このスキーの主旨を十分に発揮できた会になったのではないかと実感している。

今回の大会をベースに、次回がよりすばらしいものになることを期待している。

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一歩を出す事で新しい自分に出逢える

金本 麻理子

「やってみなければわからない、一歩を出す事で新しい自分に出逢えるのだから」−今回のSFL-Jに参加して実感した事である。

昨年の秋、新聞の隅でSFL-Jの記事を見つけたのがきっかけだった。前々からクロスカントリースキーをやってみたかった事、福祉関係に興味があった事、休暇中であった事等々の理由で魅かれるままに応募していた。軽い気持ちで臨んでいたものの、見知らぬ人や土地で上手くやっていけるのだろうか、視覚障害の方とどのように接すればよいのだろうか、経験した事のないクロスカントリーで私にガイドが務まるのだろうか... 等々の不安が次第に広がり、直前でキャンセルしようかと考えた程だった。

緊張と不安で休暇村に着くと、そこではスタッフの方々やペンションの方が暖かく迎えて下さり、参加された方々の深い人間性に触れる事ができ、すっかり今までの不安や迷いもどこかへ消えてしまっていた。

パートナーの宇野さんと、ゆっくりおしゃべりしながらコースを回った事、辺り一面の雪景色、顔に当たる風の風触、雪に埋めておいたミカンの美味しかった事、タイムレースにどきどきしながら臨んだ事等々、振り返っても楽しかった思い出ばかりである。

短い期間であったが、様々な方と共に生活する中で多くの発見があり、気付かされる事も多かった。

ペンションで同室になった森本さんは明るく、「何にでもやってみたい、やりたい事がたくさんある」と話され、その前向きさに改めて自分を見つめ直すきっかけにもなった。大学生で一人暮らしをしている事、お芝居が好きで劇場によく足を運ぶという事、ダイビングをやった事があり将来はイルカのいる海にもぐるのが夢である事等々教えてくれた。最初の頃は「こんな事言ってはいけないのだろうか、聞いてはいけないのだろうか」という想いがあったり、周りの景色や新聞を読む事さえためらってしまっていたのが正直な所であった。

夜、星があんまりきれいだったので思わず足を止めて「あ、きれい」と見入った時があった。フッと我に返った時彼女の存在に気付き、とっさに今見た光景を隠してしまいたいと思った。(私だけが見えてしまっている)という想いからだったと振り返る。彼女も気付いて「何?」と聞いてきたが、その言葉に次の瞬間「星がね、とってもきれいに見えるの」と自然に私の言葉も出てきていた。「どんな風に見えるの?」とひとみをキラキラさせている彼女を見ながら、私もありのままをできる限り言葉にしようと思った。穏やかに私の言葉に耳を傾けてくれている彼女の心の中にはしっかりと夜空の星が見えているのだろうと気付く事ができた。そしてそれまで自分が見えているという事にうしろめたさを感じていたが、それは視覚障害者の方々に対して偏見をもっていたという事だというあらたな気付きにつながった。

ひとつの事を各々の視点で、各々の心で感じればいいのであって、共通の経験や楽しみを共有する事が大切なのだと思った。

「晴眼者と視覚障害の人が同等の立場で楽しみながらスキーを楽しむ」−SFL-Jの目的であるこの言葉の意味が理解できた様な気がした。その後、彼女との接し方にふっきれたものがあったのか、共にTVを見て笑ったりゲームを楽しんだりする時間を持つ事ができた。

「これ、視覚障害者用の時計なんですよ。こっちはおさいふ。けっこう便利なものあるんですよ」 そう言って見せてくれた宇野さんにどんな反応をすればいいのかと思った事もあったが、皆さんと接しながら各々が現実を見つめ、自分自身をしっかりと受けとめられているという印象を受けた。その上で自分には何ができるのか、何を楽しもうというのかを考えていられるのだと思った。

毎日、毎日は、中身の解らない箱を開けていくようなのだと思う。時々、「もう次の箱を開けるのをやめてしまおうか」と思ってしまう私にとって、常に前向きに、目の前に出される箱に取り組んでいかれるみなさんの姿は、大きな刺激となり、励みとなった。

とにかく開けてみなければ、やってみなければ何が出てくるか解らない。参加を一度はやめようかと思っただけに、全ての日程を終えた時の満足感は、言葉ではいい尽くせない程であり、心より、参加できた事、このような企画に出逢えた事に感謝する事ができた。大会をすすめていく上で、スタッフの方々の苦労はさぞ大変な事だったと思う。一生懸命に取り組まれていた姿に、SFL-Jにかける意欲と情熱を感じ、夢を一歩一歩実現していかれた青松さんと丸田さんに大いなる拍手を送りたい。

おかげで貴重な経験や様々な方と出逢え、楽しい時を過す事ができました。心より感謝しています。ありがとうございました。

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とても充実した、開放感に満たされた時間

田中 美穂

「クロスカントリースキーにいかないか」と私が知人に誘われたのは、昨年の11月のことでした。興味があったので、とりあえず「いきます」と返事をしてはみたものの、スポーツと名のつくもの全てに対して苦手意識を持っていた私は、不安な気持ちのまま、当日を迎えました。

ところが、実際に始めてみると、ひたすら言われた通りに滑ることだけで精いっぱいで、不安を感じる余裕など全くありませんでした。それどころか、少しずつ要領がわかってくるにつれて、楽しみながら滑れるようになってきたのです。「マイペースで進める」というのは、私にとっては何より魅力的なことでした。

3日間は、本当にアッと言う間に過ぎていきました。おもしろくなってきたところで終わりになる、と言われたことを思い出しながら、すでに病みつきになってしまっている自分に、私自身が驚いた程です。

クロスカントリースキーの何が、これ程までに私を夢中にさせたのか、それはよくわかりません。ただ、とても充実した、開放感に満たされた時間だったような気がしています。それは、今までには味わったことのなかった、新鮮な感覚でした。言葉にするのは少し難しいのですが、何か達成感にも似たものがあったように思います。

視覚障害者と晴眼者が、1対1で「対等に」楽しむということを、私は、理想ではあるが実現しにくいことと考えていました。しかし、ガイドの方からの「楽しかった」、「考えていた以上にフェアに楽しめることがわかった」という感想を聞き、とても嬉しく思いました。そして、このプログラムに第1回目から参加できたことを、本当に良かったと思いました。

私は、近いうちにもう1度滑ってみたいと思いながら、なかなか機会と暇とお金がなく、今に到っています。「次回も必ず参加させていただきます!」。

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第一回スキー・フォー・ライト ジャパンに参加して

芳賀 健治

私がこのイベントに参加したのは、私の知り合いの米国在住の 谷 紀子 さんという方の紹介で青松 先生に連絡が行き、私が参加の打診を受けました。迷わず参加させて頂くことにしました。

私は東京家政学院大学の体育の教員ですが、研究分野はセラピューティック レクリエーションという領域で、障害者や入院中の方のレクリエーションやスポーツ指導などを行う分野です。「病は気から」といいますが、患者さんの気持ちをレクリエーションによって「前向き」にしてもらい、それによって生活の改善をはかろうとするものです。特に、野外スポーツを用いた領域に興味を持っています。谷さんとは、同じ研究の仲間です。アメリカでは、義手のパドラーが、ものすごい激流を下っているのを見て感激しました。私は、その川で転覆して1Kmも流され、水をガッポリ飲まされました。

さて、今回参加して感じたことをちょっと書きます。まず、ガイドトレーニングですが、わずか15分位でしたが、バンダナで二重に目隠しして完全に見えない状態でスキーをするという体験は、非常にためになりました。視覚障害で運動するいうことを実際に体験したのは初めてでした。目が見えないというのは大変な事ですが、私個人の感想では、逆に他の感覚器官が鋭くなるように思いました。わずかな時間でしたが、目が見えないことに慣れてくると「カレーの臭いがする」とか「親子丼の臭いだ」などと分かるのです。それと、何となく周りに林がありそうだとか感じるようになりました。それと、私のように一日中パソコンの画面に向かっている者にとっては、目が休まって不思議な安堵感がありました。

私のパートナーは内山君でしたが、彼はホノルルマラソン完走の経験もあるランナーです。東京シティマラソンの練習も兼ねて今回参加したそうです。やや太めの私にとっては、彼のスピードが速くて、付いていくのがやっとという感じでした。急カーブの所では、スキーがトラックからすぐはずれそうになり少し苦労しました。「直線200m!」というと、彼の走りはものすごいスピードでした。スケーティングの練習もしましたがトラックが無いと、やはり方向をどのように取って良いのか分からず、スケーティングは断念しました。

最終日のトライアルでは、できるだけ良いタイムを出そうというのが我々の目標でした。彼に付いていくのがやっとで、非常に息が苦しくなりました。(タバコの吸いすぎのせいです。反省します・・・)

今回のイベントは、クロスカントリースキーだけでなく、交流会などでも非常に楽しい思い出ができました。それに加えて、我々が視覚障害者を理解する上でも本当に意義あるものでした。結局、視覚障害者の方々も、我々とまったく同じように酒が好きだったり、おしゃべりが大好きだとか、目に障害がある以外はどこも変わりのない同じ人間なんだと思いました。逆に、我々以上に素晴らしい能力も持っているということも知りました。宿泊したペンションもなかなか快適で居心地の良いところでした。

また来年も是非参加したいと思ってます。

・・・

障害者のカヌーもやってます。いつかは、新潟から佐渡までシーカヤックで障害者の方々が海峡横断に挑戦できる機会ができるようにと夢見ています。ニフティサーブでは下記のハンドルネームでアクセスしています。

FODS-8番会議室(アウトドアスポーツとカヌーのフォーラム)(FODS-8-海が好き)
神奈川 三浦半島 宮川湾 BASE SEA KAYAKER 芳賀 健治(はが けんじ)
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Ski For Light - Japan (SFL-J) / info@sflj.org