スキー・フォー・ライト カナダ 2007

日本からの参加者の感想

last updated: 2007.10.29


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カナダのスキー・フォー・ライトに参加して

青柳まゆみ (スキーヤー・大学非常勤講師)

■はじめに■

2007年2月5日から11日まで、カナダ・アルバータ州のカナナスキスで、スキー・フォー・ライト2007が開催されました。私はこのイベントに参加し、数多くの有意義な体験をして帰ってきました。

私がクロスカントリースキーと出会ったのは今からちょうど10年前、日本で始まったばかりのスキー・フォー・ライトに誘われて何となく参加した時のことでした。クロスカントリースキーというスポーツそれ自体もすぐに気に入りましたが、何より魅力を感じたのはこのイベントの雰囲気のよさでした。

翌年、私は思い切ってアメリカのスキー・フォー・ライトに参加してみたのですが、やはり温かい雰囲気で、楽しい出会いの多い1週間でした。その後、5回ほどアメリカのイベントに参加し、今回は新たな冒険ということで、日本人がまだ誰も参加していないというカナダのスキー・フォー・ライトに行ってみることにしました。

■生活■

出発前に一番心配したのは生活と寒さのことでした。案内には、寝袋持参、その他日用品や飲み物なども各自で用意することとありました。「寒すぎて眠れなかったらどうしよう」「シャワーは好きなだけ使えるのだろうか」などなど、いろいろ想像すると不安は尽きませんでした。

実際に行ってみると、そこはアウトドア用の宿泊施設で、メイン・ロッジと20個以上の小さな木造のキャビンが広い敷地に点在していました。朝食に出かける時と、夜のプログラムが終わってキャビンに帰る時はとても寒かったけれど、室内は暖かく、くつろげる環境で、不自由なことは何もありませんでした。

私は、5人組の大家族とキャビンをシェアしました。アメリカのスキー・フォー・ライトもそうですが、親子、兄弟、夫婦など、家族ぐるみで参加している人が目立つイベントでした。そして、リピーターがとても多いため、初日には再会を懐かしむ声があちこちで聞かれました。

食事は、比較的シンプルなものが多かったのですが、お腹がすいて困ることはありませんでした。日本では高価で滅多に食べられないマスクメロンを、毎朝3切れも4切れも食べられたことが幸せでした。

テレビもコンビニもなく、電話もEメールもできない非日常的な環境でしたが、だからこそ壮大なカナダの自然と向き合い、楽しい時を過ごすことができたのだと思います。

■ガイド■

スキーエリアは、ロッジの目の前でした。スキーが大好きで終日滑っている人もいれば、午前中だけちょっと滑って、午後はキャビンの中でおしゃべりやカードゲームを楽しみながら過ごす人もたくさんいました。とにかく、フリータイムがとても多い印象でした。

私のガイドは75歳の男性。頭が下がるくらい健康的なおじいさんでした。でも、レースで速く走るのはさすがに難しそうだったので、二人で相談してガイド・チェンジをお願いすることにしました。幸い、力の有り余ったガイドと、のんびり滑りたいスキーヤーのペアが見つかり、ほっとしました。

新しいガイドは、国の研究所で森林技術の研究をしているという50歳くらいの男性。彼は、私のつたない英語に快くつきあい、スキーのテクニックも教えてくれる、とても優しい人でした。最終日の午後には、天候がよかったこともあり、ロッジから遠く離れたところまで出かけて、夕食ぎりぎりまで一緒にスキーを楽しみました。

■10キロ レース■

スキー・フォー・ライト恒例のレースは、四日目の木曜日に10キロ、そして最終日の土曜日に5キロが行われました。

10キロレースの日は、マイナス16度という信じられない寒さ。しかも、前日の夜に降った新雪がコースの表面を重く覆っていて、最悪のコンディションでした。必死に力を入れてもスキーはなかなか前に進まず、いつまでたっても手や足の先は暖まらず・・・、結果は散々でした。

でもこの日は、最高の出来事も起こりました。それは、夕食後のメダル授与式で「スポーツマンシップ・アウォード」という賞をもらったことです。

レースの途中で他のスキーヤーのアクシデントに遭遇し、私のガイドもお手伝いをすることになって、私はいったんコースから離れ、しばらくその場で待つことになりました。10分だったか15分だったかはわかりませんが、無事にそのスキーヤーがそりで運ばれ、再び滑り始めた時には、気温の低さと汗の乾きとで体中が冷たくなり、手足に全く力が入らなくなっていました。みんなが行ってしまった静かなコース上で、気が遠くなりそうでした。それでも何とかゴールにたどり着き、隣で声をかけ続けてくれたガイドと、最後まで私を待っていてくれたスタッフの人たちにお礼を言って、昼食を食べに帰りました。

アクシデントだから、途中で止まらなければいけなかったのは仕方がありません。私でなくても、誰でもそうしたはずです。でも、レースを取り仕切っていた男性スタッフから繰り返しありがとうと言われ、そして特別賞のメダルまでもらってしまったのです。「私にはとてももったいない賞です」という英語の表現が思いつかず、ただただ黙って感激するばかりでした。

■5キロ レース■

5キロレースの日は気温が高く、コースの表面も程よく凍っていて、とても快調に滑ることができました。せっかくだから思い出を一つ増やして帰りたいと思い、頑張って走ってB1女性のクラスで銀メダルをもらいました。自分とイーブン・ペースで走っている人を何とか抜いたり、ぴったりと後ろについている人を必死に引き離したりと、素人ながらレースのスリルを十分に楽しむことができました。

5キロレースの日の朝、メインキャビンの外のモニターを見て私のガイドが
「今マイナス7度。午後は晴れてマイナス2度まであがるらしいよ。」
と教えてくれました。そして私は思わず、
「えっ?それはラッキーかも!!」
と答えていました。マイナス2度という気温を心からありがたいと思えた自分が、今考えるととても不思議です。

■夜のプログラム■

夜のプログラムも充実していました。昼間は自分のパートナーとしか話をしないので、他の参加者と仲良くなったり、お互いの趣味を披露し合ったりするチャンスです。クイズ大会やタレントショー、ダンスなど、アメリカのイベントとそっくりなものもあれば、カナダ独特のものもありました。いくつか、印象的だったものを紹介します。

まず、スキー・フォー・ライト・カナダのテーマソングの大合唱。最終日の夜のパーティーもクライマックスに近づいた頃、ピアノやギター、歌のお兄さんに合わせて、みんなで楽しく歌いました。点字の歌詞カードもちゃんと準備されていました。

次に、売り上げが運営費に寄付されるオークション。司会者が、出品されたワインや洋服、小物などを順番に紹介し、その場で買い手を決めていきます。司会者の威勢のいい声と、値段を叫ぶ参加者の声がテンポよく飛び交って、市場の競りを見物しているかのようなユニークな雰囲気でした。ただ、一つひとつのオークション品にさわって値段を決められるアメリカ方式の方が、全く見えない参加者にとってはわかりやすいのにと、少し残念に思いました。なお、スキー・フォー・ライト・ジャパンのプレジデントからも、日本製のさわれる世界地図の壁掛けを預かって出品し、とても喜んでもらえました。

もう一つおもしろい体験は、スキー・フォー・ライト・カナダの年次総会。会計報告や活動報告、次回のイベントに関する意見交換、新しい理事の選出などが行われていました。参加費にその年の年会費が含まれているそうで、なんと私にも理事の投票権がありました。無責任な投票はしたくなかったので「棄権」を選んでおきました。

■最後に■

帰国後、ガイドからもキャビンメイトからも、そして役員の方々からも「また来てくださいね」というメッセージをたくさんいただきました。豪華なホテルで300人規模の大集団で開催されるアメリカのイベントにも魅力はいっぱいあります。でも、広大で静かな自然の中で、100人足らずの参加者とともに、のんびりとした時の流れを感じながら過ごすカナダのイベントも、私は好きでした。だから、都合が合えば是非もう一度カナダへ行き、初日には私も「久しぶり!」とみんなに言ってみたいです。

来年は、ブリティッシュ・コロンビア州ヴァーノンでの開催が決まっています。最寄りの空港がバンクーバーなので日本から行きやすく、しかもうれしいことに、カナナスキスよりは気温が高いのだそうです。私だけでなく、日本の他のスキーヤーにもガイドにも、是非参加してみてほしいと思います。


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